
俺が男前だったのはいいとしてだ。先日のライブ、『2月9日の悲劇』として語り継がれることになったかもしれない事故があったことを君たちは知っているか。知らない人には教えよう。いつものようにワイヤレスを生かして客席を練り歩いていた俺だったのだが、遠くにかのイカレ仲間のjackを見つけた俺は手持ちマイクに叫んだのだよ。
「じゃっく〜う、どーしてそんな遠くにいるんだ。もっと俺のそばへ来いよ。」
俺の胸にとびこんで来て頬擦りをする可愛いjack。が!そのとき悲劇は起きた。ギターのストラップが突然外れ、俺のレスポールは硬く冷たいビートルズの石の床に落下したのだ。ご存知とは思うがレスポールは重いくせにネックがマホガニーだから、落したり倒したりすると一発でネックが折れる可能性が極めて高い。表を下にして床に横たわったレスポールを、周囲のみんなは絶句して見つめていたっけ。
だが床から拾い上げた俺は驚いた。折れてない!どころかボディのどこにも塗装割れひとつないではないか。なんというラッキーな!神よ、感謝します。俺はすぐにまたギターをぶら下げ、弾いてみようとして気付いた。トグルスイッチのカバーが…砕けていた。しかし機能的には支障なく、スイッチはちゃんと作動し、俺は自分のソロを弾いて曲を終えた。なんということかチューニングすらほとんど狂っていなかったのだ。
ライブ終了後、持ち帰ったレスポールを隅々まで調べた。だって少なくとも床に最初に接地したところには大きな衝撃がかかるはずではないか。無事で済むはずがない。しかし米粒ほどの打痕が2個ほど、数センチの擦り傷が数本見つかったが、やはりどこにも大きな割れなどはないのである。かえって気持ち悪くなったが、どう眺めてもトグルスイッチ意外は無傷なのだ。(なんと偉いトグルスイッチであることよ。それもおそらく俺がセンターミックスでプレイしていたことが良かったのではないだろうか。やはり俺は偉いよなあ。)と悦に入り眠りについたのだった。
だが実はギターを守った本当の立役者はトグルスイッチではなかったのだ。